Go To Travel-2020

なんだろう。コロナのずっと前から感じていた、不平等に対する怒りや憤りを通り越した、この寂しさは。この記事ね、うちの宿だけがかわいいから書いているんじゃないんです。うちが全国にある多くの小さな宿の置かれている状況を推察できるから、代弁してるんです。

宿泊業は今回最も被害を受けた業種です。その中でもゲストハウスは相部屋が基本で、特に利用客が落ち込んでいます。

今回政府が出した観光業への救済案「Go To Travel」。補助対象となるのは旅行業者を通した宿泊である必要がありますが、小さな宿は旅行業者なんて通せません。また小さな宿を利用する人は、旅行業者に仲介してもらうことはありません。また1/2の補助が出る場合、もっと高い宿に泊まりますよね。仮に旅行業者にゲストハウスを勧められても泊まるんでしょうか?旅行業者の圧力団体は政治家さんに組み込んでもらうよう言ったのでしょうか?国民一律で現金給付じゃだめなんでしょうか?売上が落ち込んだ事業者への現金給付(持続化給付金)をアップするのじゃだめなんでしょうか?というかそもそも、旅行に行けないくらい貧困に陥ってしまった人も多いはずですよね?最も救済されるべきそういう人たちにたった10万円しかいっていないのに、旅行の補助金とかいう次元なのでしょうか?

出雲市宿泊機能強化対策事業補助金-2018

賃貸で宿泊業をしている業者には適用されない

出雲市宿泊機能強化対策事業補助金

てかこういうこともあったね、思い出しちゃったよ。

出雲市での宿泊客数が伸び悩む中、例年市の予算で出している増改築に対する補助金ですが、補助対象者は「固定資産税納税義務者」である必要あります。2年前にこれについて出雲市に聞きに行ったのですが、賃貸物件を利用して宿泊業を営んでいる事業者には適用できないとのことでした。

多くの空き家活用は賃貸で行われます。うちのように空き家を借りて宿泊業を営んでいる事業者は近年多くなっていますが、こういう事業者には適用できないということです。出雲市は空き家対策事業をしているにも関わらず、その大変メジャーな活用方法である宿泊業での補助が受けられる対象を大幅に限っていることになります。

さらに、小さな宿には適用されない

簡易宿所には適用されない

旅館業法の営業区分は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」があり、左から順に設備基準が緩くなります。大きなホテルや旅館、一部の民泊などは「ホテル」「旅館」あたりで営業許可を取っています。多くのゲストハウスや民宿は「簡易宿所」で営業許可を取っています。いとあんを含め、零細の小さな宿は簡易宿所がとても多いです。しかし当補助金対象は「ホテル」「旅館」のみ。理由を出雲市に尋ねたところ、宿泊客数を増やそうと思ったら大きな宿泊施設に補助するほうが、出雲市全体での宿泊客数を増やせるからという回答をいただきました。ぎょーてん、本音すぎるwww

「貴重なご意見をありがとうございます。」

市の職員さんに意見したところそういわれたので、「何かできることはありますか」と申し上げたところ、「観光動態調査」(各宿にお願いしている観光客の動向アンケート)を出してくださいとのことでした。結局宿泊客の数を引っ張ってこれない小さな宿なんて何も期待されていないし、何も本気でやってもらえないと思わざるを得ませんでした。あれから二年、上記のような空き家活用や零細宿の発展を阻害する条件については変更はなく、またそれについての説明もありません。出雲市役所のやられていることを全否定はしないけれど、こちらだって限られたリソースで最大の効果をあげられる動きを常に選択しつづけています。意見を言いに行っても暖簾に腕押しでは、労力の無駄遣いでしかありません。ということで、省エネのため、しばらく役所に行くのは住民票をとるときだけになりました。
これは出雲市の話なんだけれど、国についても同じようなことはいっぱいあって。まあ、コロナ以前からこんな具合だったわけです。

草の根にも限界がある

ゲストハウス愛好者、それは大学生だったりゲストハウス周りを趣味にしている人だったりもするのだが、コロナで宿泊客数が激減する中、バーチャル宿泊や宿の情報発信イベントなどを企画してちょっとでも宿に還元したり、宣伝になるよう動いてくださったりしています。本当にありがたい、何がって、売上アップとかではなくて、こんな小さな宿を思いやってくれるその気持ちが胸にしみます。こういう方々もほぼボランティアで草の根でやっておられることも多いとお察しします。そういう活動をされている方々に本当に敬服するとともに、本来事業者を支えるべき国や自治体、各種営利団体が、コロナの感染拡大対策こそ(半ば強制的な)指導するものの、それとセットであるはずの補償についてはとても遅く、かつとても十分とは言えない、中小零細事業者置き去りの状態であることはしっかりと認識すべきです。

自由競争≠フェアな競争

そもそもなのですが、現在の金融資本主義における自由競争は決してフェアに働いていません。資本を持つものは利息によって自動的に富み、そうでないものは金利の返済で食うに困るまで追い込まれます。また政治に与えられる影響力も大手であるればあるほど増大し、自社への利益誘導は容易になります。この仕組みの中で小さな事業者ができる努力を行ったところで、努力に正比例する結果が得られるわけではありません。現状の仕組みの中では、最低でも政府、行政による格差是正のための再配分がなされるべきです。また将来的には根本的な金融の仕組み改革が不可欠になってきます、でも近い将来ね。その具体的な方法は、また次の記事で。